Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「すみません。こういう者です」

紫月が警察手帳を見せると、女性は顔を強張らせる。彼は女性を気にすることなく続けた。

「こちらに住まれている堀内さん、ご存知ありませんか?」

「堀内さんなら、昨日から弟さんと旅行に行ったよ。確か行き先は長野だったかな。三泊四日だって話してたよ」

女性にお礼を言い、紫月と蓮はアパート前に停めてあった車に戻る。アパートに高雄がいないことに少しホッとしていた。

「泉先生の見立てでは、犯人は犯行現場に長く留まるんですよね。なら、長野にいる堀内高雄を殺害することは不可能。長野にいる間、堀内が殺害される可能性はゼロに近い!」

蓮が安堵のため息を吐いた後、明るく言った。確かに犯人が単独犯であれば、堀内高雄の殺害実行は難しいだろう。しかしーーー。

「犯人が単独犯とは限らない。堀内高雄の保護を長野県警に要請しよう」

紫月は、修二と紀人に高雄がアパートにいなかったこと・そして高雄の保護を要請したい旨を伝えるためにスマホを取り出す。その時だった。