親愛なる魔王様へ〜The Beast〜

「それじゃあ、作戦通りに行こうか」

クラル様が杖を取り出して構える。僕も呪具を手にした。背中合わせに立った僕たちは、同時に呪文を呟く。

「破壊魔法ーーーシュヴァルツ!」

刹那、二人の持つ杖と呪具から黒と紫が混じったような色の光線が放たれる。クラル様の放った魔法は南側の方へ、僕の放った魔法は北側へと飛んでいき、民家や建物に当たって大きな音を立てる。

突然のことに町の人たちは一瞬でパニックになった。僕たちは構わずに破壊攻撃を続ける。家が壊れ、子どもが泣き叫び、魔法が当たったのか負傷する人もいた。

(さっきの平和が嘘みたいだな)

自分であの平穏をぶち壊したというのに、どこか他人事のように僕は思った。泣いている人を見ても何も思わない。僕にはクラル様がいればいい。ディスペア家があればそれでいい。

クラル様は町の南側へ、僕は北側へと足を進めて破壊していく。普段は屋敷の庭を駆け回っているモンスターたちも加勢してくれたので、破壊はスムーズに進んでいった。