【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

「フィリベルトさまも、その期間に見極めてくださいませ。貴方(あなた)が私を知って、それでも私を望んでくださるのなら――そのときは、ぜひ正式にお付き合いしてください」

 だって、貴方が見た私は、私であって私ではないから。

 差し出された手を取ると、彼はそっと手の甲に唇を落とした。

 ドキッと胸が高鳴ったのは、きっと気のせいではないでしょう。

 こうして無事に(?)期間限定の恋人ができた。

「明日は登校しますか?」
「え? ええと、どうしようか考え中です」
「……では、明日迎えにきますので、一緒にいきましょう」

 え、一緒に? と目を丸くすると、彼は悪戯っぽく口角を上げた。……く、そういう顔も格好いいのね……!

 私、こんなに面食いだったっけ? と首をかしげたくなってしまう。

 ううん、もしかしたら、自分の好みを考えられる余裕が生まれたのかもしれないわね。

「それでは、学園までエスコートしていただけますか?」
「喜んで、リディア嬢」

 それなら、明日は気合を入れないといけないわね。

 アレクシス殿下とフローラと会うことになるでしょうし。

 中庭を歩きながら、フィリベルトさまといろいろな話をした。彼はとても話し上手で聞き上手だった。なんだか、話しているとどんどん楽しい気持ちになってきた。もっと話したい、という気持ちに……不思議な人だわ。

 それにしても、今日も学園の日だし、彼も学園を休んだのかしら。まさか昨日断罪イベントがくるとは思わなかった。だって、昨日は卒業パーティーでもなんでもない、普通のパーティーだったもの。

「それでは、私はこれで失礼します」

 気が付けば中庭から離れてしまっていた。フィリベルトさまが立ち止まり、私を見つめてから名残惜しそうに微笑んだ。

「本日は、楽しい時間をありがとうございました」

 すっとカーテシーをすると、「いえ、こちらこそ」と彼の言葉が耳に届く。

 顔を上げると、フィリベルトさまはそっと私の頬に手を添えた。まるでガラス細工に触れるかのように。

 そして、そのまま顔が近付いて――……反対側の頬に、ちゅっと軽くリップ音を立ててキスをした。すぐに離れたけれど。

 思わずキスされたほうの頬に手を添えると、彼はすごくよい笑顔で、

「赤くなった貴女も、可愛らしいですね」

 と爽やかに去っていった。

 バクバクと心臓が早鐘を打っている。

 私が恋に落ちるのは、あっという間かもしれない――……!