「リディア、きみとの婚約を破棄することを、ここに宣言する!」

 いきなり伝えられた言葉に、はっと顔を上げる。

 茶色に近い金色の髪、青い瞳、とても整っている彼の顔を見たとたん、いろんな情報が頭の中で再生されて、ぐわんぐわんと眩暈(めまい)がした。

「――ッ」

 情報量の多さに、思わず額に手を置く。視界に入ってきたのは白色の肘まである手袋。視線を落とすとサファイアブルーのドレス。きっと、彼の瞳に合わせたもの。

 それから、今の状況を理解して、なるほど、これが噂の断罪イベントか! と妙に冷静になり判断できた。

 確か、ゲームのタイトルは『花の乙女 ~永遠を誓う~』 だったっけ。

 うん、うん、なるほど。

 で、私はリディアと呼ばれていたから悪役令嬢なのね。彼女は明るい金色の髪に、エメラルドグリーンの瞳を持つ、吊り目の十代後半の女性。

 ふむ、ここで悪役令嬢のリディアは、どういう態度を取るのが相応しいのか。

 花の乙女――桜色の髪に、明るい茶色の瞳を持つフローラを守るように彼女の前に立つ殿下、アレクシス。

 私、殿下ルートをやる前に命を落としてしまったから、どう対応すればいいのかさっぱりわからないわ。

 とりあえず、ここは令嬢らしく振る舞うべきよね。