だから、彼女の手を取ることにした。
「では、よろしく頼む」
こうしてカタルとクロエは婚約し、そして一年で順調に結婚まで行った。
しかし、結婚式を終えた夜、初夜を待つクロエは泣いていた。
「なぜ泣いている?」
彼女は何も答えなかった。初夜で涙をこぼす理由などいくつも思いつくものではない。彼女は涙を拭いカタルと相対したが、その目には後悔のような色が浮かんでいるように見えた。
「好きな男がいるのか?」
カタルの質問に彼女は目を逸らした。この沈黙は肯定と取って問題ないだろう。
「他の男を思う女を抱く趣味はない」
カタルはクロエを寝室に置いて、部屋を出たのだ。その日から、カタルとクロエは同じ部屋を使うことはなかった。
皇族の義務が頭を過ったが、泣くほど愛する人がいる女性に皇族の責務を負わせるのは可哀想だ。
おそらくクロエは両親に無理矢理結婚を決められたのだろう。ピエタ侯爵家は皇族との繋がりを強く望んでいた家だ。
彼女の『結婚に愛など必要ない』という言葉は自分に言い聞かせているものだったのかもしれない。
だから、カタルは頃合いを見て彼女と離婚をすることに決めていた。
しかし、ある日事件が起きた。それは、二人が結婚してから四ヶ月ほど経った日のことだった。
そのころ、カタルはまだ王宮で暮らしていた。仕事を終え、自身とクロエが暮らす宮殿に戻ってきたときのこと。
「殿下、おめでとうございます!」
使用人たちがこぞって、カタルに祝いの言葉を投げかけた。
意味がわからずにいると、王宮に出仕している医師が深々と頭を下げて言ったのだ。
「おめでとうございます、殿下。ご懐妊でございます」
「では、よろしく頼む」
こうしてカタルとクロエは婚約し、そして一年で順調に結婚まで行った。
しかし、結婚式を終えた夜、初夜を待つクロエは泣いていた。
「なぜ泣いている?」
彼女は何も答えなかった。初夜で涙をこぼす理由などいくつも思いつくものではない。彼女は涙を拭いカタルと相対したが、その目には後悔のような色が浮かんでいるように見えた。
「好きな男がいるのか?」
カタルの質問に彼女は目を逸らした。この沈黙は肯定と取って問題ないだろう。
「他の男を思う女を抱く趣味はない」
カタルはクロエを寝室に置いて、部屋を出たのだ。その日から、カタルとクロエは同じ部屋を使うことはなかった。
皇族の義務が頭を過ったが、泣くほど愛する人がいる女性に皇族の責務を負わせるのは可哀想だ。
おそらくクロエは両親に無理矢理結婚を決められたのだろう。ピエタ侯爵家は皇族との繋がりを強く望んでいた家だ。
彼女の『結婚に愛など必要ない』という言葉は自分に言い聞かせているものだったのかもしれない。
だから、カタルは頃合いを見て彼女と離婚をすることに決めていた。
しかし、ある日事件が起きた。それは、二人が結婚してから四ヶ月ほど経った日のことだった。
そのころ、カタルはまだ王宮で暮らしていた。仕事を終え、自身とクロエが暮らす宮殿に戻ってきたときのこと。
「殿下、おめでとうございます!」
使用人たちがこぞって、カタルに祝いの言葉を投げかけた。
意味がわからずにいると、王宮に出仕している医師が深々と頭を下げて言ったのだ。
「おめでとうございます、殿下。ご懐妊でございます」



