次はシャルロッテが驚く番だ。馬車が止まった先は、帝国内でも有数のドレスサロン。皇族や有力な貴族の夫人や令嬢が愛用しているという噂のデザイナーの店だ。
一介の令嬢が入れるような場所ではなかった。
「カタル様、行き先を間違えたようですね」
「何を言っている? ドレスサロンだろう? 行くぞ」
「待って待って! こんな有名店、予約もなしに入れるわけないじゃないですかっ!?」
カタルはお構いなしにサロンの扉を開き、シャルロッテの叫び声だけが虚しく響いた。
「アロンソ公爵、ようこそお越しくださいました」
「彼女のドレスを何着か作りたい。予算は気にしなくていい」
「まあ! 噂の婚約者様ですね。ようこそいらっしゃいました。まずは採寸をしましょう」
予想に反して、ドレスサロンの店内は歓迎ムードだった。
店員がテキパキとシャルロッテのドレスを脱がし、さっさと採寸していく。
(さすがアロンソ家……! そうよね。皇族だもんね)
カタルを『冷酷悪魔』と蔑むことはしない。よく考えてみれば普通のことだ。
「綺麗なストロベリーブロンド。珍しい色ですわよね。素敵」
「あはは。よく言われます。でも北部の一部の地域では多い髪色だったそうですよ」
ストロベリーブロンドは人目を引く髪色だ。両親は金髪なのだが、弟のノエルも同じ色をしている。どうやら、父方の曾祖母がシャルロッテやノエルと同じようなストロベリーブロンドだったようだ。
「あの……カタル様はああ言ってましたけど、高いのはちょっと……」
シャルロッテは高いドレスは着慣れていない。元々は倹約家だったのだ。高いドレスを買うくらいなら、将来のために貯蓄を増やしていた。だから、繊細なレースが幾重にも重なるようなドレスは緊張する。
シャルロッテは店員にこっそり耳打ちした。店員は目を三日月のように細めて笑う。
「心配無用ですよ。ドレスの数着ではアロンソ家の財産は傾きませんから」
一介の令嬢が入れるような場所ではなかった。
「カタル様、行き先を間違えたようですね」
「何を言っている? ドレスサロンだろう? 行くぞ」
「待って待って! こんな有名店、予約もなしに入れるわけないじゃないですかっ!?」
カタルはお構いなしにサロンの扉を開き、シャルロッテの叫び声だけが虚しく響いた。
「アロンソ公爵、ようこそお越しくださいました」
「彼女のドレスを何着か作りたい。予算は気にしなくていい」
「まあ! 噂の婚約者様ですね。ようこそいらっしゃいました。まずは採寸をしましょう」
予想に反して、ドレスサロンの店内は歓迎ムードだった。
店員がテキパキとシャルロッテのドレスを脱がし、さっさと採寸していく。
(さすがアロンソ家……! そうよね。皇族だもんね)
カタルを『冷酷悪魔』と蔑むことはしない。よく考えてみれば普通のことだ。
「綺麗なストロベリーブロンド。珍しい色ですわよね。素敵」
「あはは。よく言われます。でも北部の一部の地域では多い髪色だったそうですよ」
ストロベリーブロンドは人目を引く髪色だ。両親は金髪なのだが、弟のノエルも同じ色をしている。どうやら、父方の曾祖母がシャルロッテやノエルと同じようなストロベリーブロンドだったようだ。
「あの……カタル様はああ言ってましたけど、高いのはちょっと……」
シャルロッテは高いドレスは着慣れていない。元々は倹約家だったのだ。高いドレスを買うくらいなら、将来のために貯蓄を増やしていた。だから、繊細なレースが幾重にも重なるようなドレスは緊張する。
シャルロッテは店員にこっそり耳打ちした。店員は目を三日月のように細めて笑う。
「心配無用ですよ。ドレスの数着ではアロンソ家の財産は傾きませんから」



