【書籍化】狼皇子の継母になった私の幸せもふもふ家族計画

 カタルはパラパラとカタログを捲る。次第に眉間の皺が増えていった。空気が重い。しかし、シャルロッテは諦めるわけにはいかなかった。

(アッシュに「パパが選んでくれたのよ」って言ったら、絶対喜んでくれるもの!)

 あの愛らしい青の瞳をキラキラと輝かせるに違いない。想像しただけでかわいいのだ。実物はその五倍は可愛いだろう。
 シャルロッテはカタログから似合いそうな服を五着ほど選んでいく。正直なところ、すべて似合うから「全部」と言いたかったのだが、それをやるとカタルも真似をしてきそうだからやめた。やはり、「選ぶ」という行為が重要なのだ。
 カタルは難しい顔をしながら、一着の服を選んだ。ピンクのリボンタイが可愛い服だった。

「これにしよう」
「どうしてこれを選んだんですか?」
「……秘密だ」
「ええ~。意地悪!」

 数ある中から一つだけ選んだのだから、理由があると思ったのだが、適当に選んだのかもしれない。しかし、三十分近くかけて決めた服だ。きっと、アッシュも喜ぶだろう。
 シャルロッテは馬車に乗込みホッと息を吐き出した。

「なんだかんだ、たくさん買ってしまいました! こんなに一日でお金を使ったのは初めてです!」
「君があれもこれもと追加したからだろう」
「だって、アッシュはどれも似合うんですよ」

 脳内で試着させたらどれも似合ったのだ。だから、仕方ない。そう主張すると、カタルは小さく笑って許してくれた。

(さすがアロンソ家! お金持ちね!)

「次はアッシュも連れてきたいです。また付き合ってくれますか?」
「外に出られるようなったらな」
「ええ、きっとすぐに出られるようになります。今日はありがとうございました。帰りましょう」
「何を言っている? 君の買い物がまだだろう?」
「……へ?」

 シャルロッテが首を傾げているあいだに、カタルは馭者に行き先を告げる。そして、馬車はアロンソ邸とは別の場所へと向かった。