【書籍化】狼皇子の継母になった私の幸せもふもふ家族計画

 マリンはキッとシャルロッテとカタルを睨んだ。

「クロエには何度も返事を送っている。息子には会わせられないと」
「なぜですか? クロエ様は毎日泣いておられます。子どもから母親を奪うなんて、ひどいことがなぜできるのですか!?」
「私がなんと呼ばれているか知っているだろ?」

 マリンの必死の訴えなど胸には響かないとばかりに、カタルはため息を吐いた。この三年間、そうやって、悪者の演技をし続けてきたのだろうか。

「坊ちゃまは本物のお母様にお会いしたいですよね?」
「……ほん、もの?」
「はい。アッシュ坊ちゃまは生まれてすぐに本物のお母様から引き離されて過ごしてきたのですよ」

 アッシュは困ったようにシャルロッテを見た。

「アッシュ坊ちゃま。あの二人は悪者です。お二人をこんなところに一人で閉じ込めておくような人なんですよ」
「ママもパパもわるもの、ちがうよ」

 アッシュは青の瞳に涙を溜め、唇をかみしめた。
 すぐにぽろぽろと目から涙がこぼれる。

「坊ちゃまは騙されているんですよ。あの女は坊ちゃまを騙してここにずっと閉じ込めておくつもりです」
「ちがう。ママ、いっぱい好きくれるもん……」

 アッシュは我慢できなくなったのか、「ママ~」と泣き叫んだ。今まで抑えていたものが一気に外に出たのだろう。頭から耳がピコンと生え、お尻からは尻尾がにょきっと現れた。それだけならまだマシで、そのまま身体は一瞬にして狼へと変化する。

「ひっ! バ、バケモノッ!?」

 マリンが叫び声をあげる。そして、狼になったアッシュを放り投げた。