【書籍化】狼皇子の継母になった私の幸せもふもふ家族計画

 けれど、彼女はアッシュに会いたいようだ。

「大丈夫。アッシュとの時間が一番大切だから」
「私も一度お坊ちゃまにお会いしてみたいです」
「そのうち会えると思うわ」
「坊ちゃまはいつもどんなことをしているんですか?」
「うーん。色々よ。絵を描いたり、絵本を読んだり……」

 最近は読める字も増えてきた。吸収力がすごく、どんどん成長していく姿に感動すると同時に寂しくもなる。すぐに大きくなって、シャルロッテの手など必要なくなるのだろう。

(一瞬だからこそ、たくさんかわいがらないとね)

 シャルロッテはマリンに別の仕事を頼み振り切った。そして、いつものように本邸と別邸を隔てる扉を開ける。

「ママ―!」

 扉をくぐった瞬間、アッシュがシャルロッテに抱き着く。
 彼は嬉しそうに顔を上げる。ぷにぷにの頬が真っ赤に染まっていた。

「ここまで走ってきたの?」
「うん! ママの足音がしたの!」

 シャルロッテは扉を見る。この奥の音が聞こえるのか。

(やっぱり獣人ってすごいなぁ~)

 本邸と別邸を隔てる扉はとても厚い。向こう側の音が聞こえるようには見えなかった。

「今日はね、おみみ、我慢できてるの!」
「本当だ。すごいね」

 シャルロッテが頭を撫でる。彼は嬉しそうに「えへへ」と笑うとぴこんっと耳が生えた。

「あ~」

 アッシュは悲しそうに眉尻を下げ、耳を両手で押える。

「ママが撫でるとでちゃうんだ。ごめんね」