「お母さん!お母さん!あんたらなんてことすんのよ!!すぐに縄を解きなさいよ!!」
実里に揺さぶられている母親はまだ息があった。
このままではまずい。
「田村さんちの娘じゃないか。諦めなさい。よく見ろ、お母さんはもう正気じゃない」
「黙れ!触るな!私のお母さんはまだ生きてるんだ!!!」
「いいや、死んでいるも同然だよ。頭のおかしくなった人間はお山の神様に隠してもらわないと」
駄々をこねるこどもを宥めるような大人たちの態度に目じりが痙攣する。
蔓延る因習。
従う村人。
命を摘み取っていい理由など、ない。
足がひとりでに動く。
「すぐに病院へ運んでください。実里のお母さんを殺すつもりですか」
私は村人の前に立ちはだかった。
絶対に連れて行かせない。



