「じつはすこし前、あんたの母親に道すがら声をかけられたんです。
"近くの川に行きたいから教えてほしい"
そう言われました」
横から伸びてきた手が、守助の胸ぐらを殴るように掴む。
ものすごい剣幕をした実里だった。
「それで…おまえは川の場所を教えたのか!!!」
空気を揺らすような声に肌がビリビリする。
しかし守助は一貫して飄々としていた。
「教えましたよ。ずいぶん憔悴されたご様子でしたので、気分転換でもしたいのかと」
「ふざけんな!!お母さんが死んだら責任取れるのか!!」
「はは、母親の危機に屋上でただ泣き喚くことしかしなかったあんたの口が言えることですかねぇ」
私は呆然と2人の応酬を見つめる。



