「何度話しかけてもダメだった。まったく返事をしてくれない。私のことなんかまるで見えていないような反応だった」
「朝は?お母さんの様子はどうだったの?」
「変わらないよ。縁側に座って、ひたすら笑ったりひとりごと呟いたり。返答もなかった。きっと寝てすらいない」
「…そっか」
「ねえ、どうしよう菫、私のお母さんお山に連れて行かれちゃうのかな?!」
目から大粒の涙を流して私の両肩を掴む実里。
その手はガタガタと震えている。
無理もない、たったひとり母親がいなくなってしまうかもしれないんだ。
「落ち着いて実里。まだ狂ってしまったと確定したわけじゃないよ」
引き寄せて、そっと抱き締める。
背中をさすりながら、なにをしてあげられるか必死に考えた。



