「実里…どうしたの?」 「あの、あのね」 実里は縋るように私の腕に絡みつきながら、耳もとで言った。 「お母さんが、狂ってしまったかも」 私にしか聞こえないほどその声は掠れ、震えている。 どうして実里が私に声をかけてきたのかすぐに悟った。 頭のおかしくなった人間を山に隠す なんて因習、この村で表立って反対しているのは私くらい。 つまり私以外の村人に身内が狂ったなど話してしまえば、実里のお母さんはすぐに連れていかれてしまのだ。