「人は皆、誰しもが、簡単に狂ってしまえるんだ」 ぬるりと伸びてきた冷たいてのひらに両頬を包まれる。 「神様なんていやしない」 黒い目が、迫ってくる。 「俺がもし狂っちまったときは、姉さんに隠されたい」 「……っ」 「でもそれ以上に」 「なに、いって」 「姉さんを隠したい」 視界全てが闇に覆われ、自分がどこにいるのか分からなくなった。