「あの人は…もうお山へ行ったんでしょうか」


「………」


「捨てられて、絶望して」


「………」


「神様に、隠されちまうんですね」


「守助、やめなさい」


「あぁ、そうか」


「守助」


「死を間際にしても、絶望すら感じない人間が、頭のおかしくなった者と云われるのですね」


「守す、け…」



おぞましいことをやめない守助を叱ろうと顔を上げれば、真黒な眼球と目が合った。



ぞわり



背が粟立つ。