名前。
そういえば、名前をまだ決めてなかった。
国境を違法に越えるに際し、頭領付きの世話役の男は、何度も僕に念を押した。
「良いか、必ずやり遂げろ。この仕事だけは、絶対に成功させるんだ」
今まで、そんなに語気を荒らげることはなかった。
それなのに今回、彼がこんなに必死なのは、多分彼が頭領から直接指示されたからなのだろう。
失敗すれば、僕も、この世話役も殺される。
自分が殺されるのは別に怖くない。
死にたくないとは思わない。
殺したいとも思わない。
道具に、感情なんて必要ないから。
ただ、任務を遂行するに当たって、何か名前を考えなければならないのではないか、と思った。
だから聞いてみた。
「…僕、名前、何にしたら良いの」
「黙ってろ!騒ぐんじゃない」
…黙ってろさん。
騒ぐんじゃない君。
どちらも、名前としてはあまり使い道にならなさそうだ。
これまで僕は、ずっと番号か、コードネームで呼ばれていた。
生まれたときの名前なんて、呼ばれなくなって久しい。
良いんだろうか?生まれたときの名前を使っても。
特に指示はないし、それに…この機会を逃したら、僕は一生、名前で呼んでもらえないかもしれないし。
「…令月にしよう」
こうして僕は、数字で呼ばれる暗殺者から。
令月という名前を持つ、暗殺者になった。
そういえば、名前をまだ決めてなかった。
国境を違法に越えるに際し、頭領付きの世話役の男は、何度も僕に念を押した。
「良いか、必ずやり遂げろ。この仕事だけは、絶対に成功させるんだ」
今まで、そんなに語気を荒らげることはなかった。
それなのに今回、彼がこんなに必死なのは、多分彼が頭領から直接指示されたからなのだろう。
失敗すれば、僕も、この世話役も殺される。
自分が殺されるのは別に怖くない。
死にたくないとは思わない。
殺したいとも思わない。
道具に、感情なんて必要ないから。
ただ、任務を遂行するに当たって、何か名前を考えなければならないのではないか、と思った。
だから聞いてみた。
「…僕、名前、何にしたら良いの」
「黙ってろ!騒ぐんじゃない」
…黙ってろさん。
騒ぐんじゃない君。
どちらも、名前としてはあまり使い道にならなさそうだ。
これまで僕は、ずっと番号か、コードネームで呼ばれていた。
生まれたときの名前なんて、呼ばれなくなって久しい。
良いんだろうか?生まれたときの名前を使っても。
特に指示はないし、それに…この機会を逃したら、僕は一生、名前で呼んでもらえないかもしれないし。
「…令月にしよう」
こうして僕は、数字で呼ばれる暗殺者から。
令月という名前を持つ、暗殺者になった。


