「ねぇ羽久…。どうしても駄目?どうしても言わなきゃ駄目なの?」

「駄目に決まってるだろ」

今更何を言ってるんだ、このハゲたおっさんは。

「でも言いたくないんだよー!」

「…」

シルナがさっきからぶつぶつ言ってるのは、結果発表のことである。

どのチームが一位、どのチームが二位、どのチームがビリ、と発表しなければならない。

しかし、シルナはそれが嫌ならしく。

「そうだ、皆優勝!皆優勝ってことにすれば良いじゃん!」

またアホなこと言い始めてる。

「アホ抜かせ。イレースがきっちり点数数えてるんだぞ」

「うぅぅ…」

シルナは、何故か半泣きであった。

「私が勝ち負けを伝えたが為に…悲しむ子がいると思うと…いたたまれない…」

「じゃあ運動会なんて、やめれば良いじゃないですか」

イレース、一刀両断。

良いこと言うなぁ君。

「それはそれ!これはこれなの!」

「あぁそうですか。どうでも良いので、早く閉会式始めてください。時間ですよ」

「あぅぅ…」

イレースに叱られ、シルナはとぼとぼと朝礼台に上った。

生徒達は、緊張の眼差しでシルナを見つめた。

「えー…。それじゃー…閉会式始めまーす…」

おい。何だその覇気のない声は。

もっとしゃんと喋れ。

「まずは、第三位から発表します…」

ごくり、と生唾を飲み込む生徒達。

三位と言えば聞こえは良いが、要するにビリってことだからな。

三チームしかないんだから。

「第三位は…240点で、赤チームです」

あぁ…言ってしまった。ついに。

赤チームの生徒達は、落胆の溜め息を溢した。

一気に空気が重い。

「えー、第二位は…307点で、青チームです」

今度は、落胆と歓声が同時に上がった。

三つしかないチームで、下二つが発表されたのだから。

残るチームと言えば。

「栄えある第一位は、309点で、黄チームです」

黄チームの生徒達の、あの嬉しそうな顔。

これには、朝礼台の上に立つシルナも、嬉しそうであった。