【Quintet】

 滑らかに発進した車はスモークガラスで覆われていて外は見えない。

『沙羅さんは来月に成人を迎えられますよね』
「よくご存知ですね」
『貴女のことならなんでも知っていますよ。お母様のことも、お父様が今はアメリカにいらっしゃることも、あのマンションで星夜達と暮らしていることも』

 沙羅は結城の表情を観察した。取り繕った笑顔の裏でこの男は何を考えている?

『しかし年頃の娘さんが四人の男と同居とは、お父様は心配されないのですか?』
「父は自由な人ですから。それに父は彼らを信用しているんです。私も彼らを信頼しています」

 結城の冷たく鋭い眼差しから沙羅は目をそらさない。こういう威圧感を出す相手には絶対に自分から目をそらしてはいけない。
目をそらしたら負けだと子どもの頃に学んだ。

『沙羅さんは星夜をどう思っていますか?』
「星夜はいつも私を気にかけてくれる優しい人です」

質問の意図がわからない。考えも読めない。
やはり沙羅が嫌いな人種だ。

『ほう。優しい……ね』

 何故か肩を震わせて笑う結城との会話はそこで途切れた。無言の空気は苦痛と退屈を産み、しばしの我慢に堪えると車が停車した。

運転手に扉を開けてもらってから車を降りた。沙羅の目の前には高いコンクリートの塀で覆われた屋敷がそびえている。

恐らくここは目黒区青葉台……星夜の実家だ。