「暁斗くん!次はあれどうですか?」

「お前ジェットコースター苦手だろ」

「いけます!絶対いけます!」


「いけますってなんだ…無理しなくていいって」

「暁斗くんと乗りたいの!」


暁斗くんの手を引っ張って、ジェットコースターに向かう。




・・・・・


「とりあえずこれ飲め」

「ありがとう…ござい…ます」


結果、やはり怖くてやられてしまった。
でも、頑張って乗れた。



「ったく…」


あーあ、呆れられちゃったかな……



「ごめんな、無理させて」


え、、

「ちがっ…私は…」

謝らせてしまった。



暁斗くんが私の頭を撫でる。


「ありがとう」


暁斗くんには敵わない。




「気分治ったよ!さぁ、次はなに乗ろっか!」

「まだ休んでろよ」

「大丈夫だから!」


それからも色々な乗り物に乗って気付けばあっという間に夕方。


「ソフトクリーム食べようよ」

「はいはい」


結局私が楽しんじゃってるんだけどね。



「バニラとチョコ、1つずつください」

私が頼むと暁斗くんが横からお会計を。


「ダメ!」

「は?」

「今日は私が買います!」

「今日…?」


おわっ!口が滑った!!


「はい、暁斗くんはバニラね」


夕方になったといっても、まだまだ暑い。
アイスがとっても美味しい。



「俺もチョコがいい」

そう言って私が持ってるチョコ味のソフトクリームをパクッと食べた。



ドキドキドキドキ

わわわー
なんか、今のカップルっぽかったよね!?

って、私たちカップルか!!
ひとりで盛り上がる。





「暁斗くん、観覧車乗らない?」

「あぁ、いいよ」


この遊園地名物の観覧車。
高いけど、ゆっくりだしこれならいける。



週末はすごく混むらしいけど、平日のおかげですぐ乗れてラッキー。

向かい合って座る。


暁斗くん、今日楽しんでくれたかな??



「なぁいお。なんで遊園地だったんだ?」


突然の質問。


えっと…


「暁斗くん、遊園地来たことないんだよね?飯田さんに聞いて…。前も言ったけど、暁斗くんに“初めて”をたくさん経験してほしいなぁと思って」

まぁ、この前の野外遠足でミニ遊園地的な所は行ったけどね。


ずっと勉強や仕事を覚えるために頑張ってきた暁斗くん。

少しだけでも、高校生らしさを実感してほしい。
高校生らしい時間を過ごしてほしい。



「それに…私が暁斗くんと遊園地デートをしたかったっていうのもあるんだけどね」

自分の夢も叶えちゃってズルい私。


「ふーん………」


暁斗くんがジッとこっちを見る。
目が合って急に恥ずかしくなる。



あ、もう少ししたらてっぺんだ。


私はガザゴソと鞄を漁る。




「暁斗くん!お誕生日おめでとう!!」


ベタ過ぎるけど、観覧車がてっぺんに着く時にプレゼントを渡すって決めてた。




「え…誕生日?」

「うん。今日は暁斗くんのお誕生日だよ」

「あ、そっか…。忘れてた」


マジですか!!??
忘れる!!??
誕生日忘れる!!???



「これ…ほんと大したものじゃないんだけど…プレゼントです!!」


たくさん悩んでやっと決めれた物。



包装を綺麗に取っていく暁斗くん。


「ペンケース?」

「うん!学校とか仕事で使えるかなって思って」


黒のペンケースにした。



「あははは!」

暁斗くんが大きな声で笑い出した。



「いおってやっぱセンスがちょっとおっさんだよなぁ。シブイっつーか」


ガーーーーンッ!!!!


「わーん!!返して!!もう2度とプレゼントなんかしないんだから!!」

バカバカ!!
デリカシーないキモ野郎め!!



「無理」

じゃれてたらいつの間にか、暁斗くんの腕の中。



「来年もその次もずっと祝うんだよな?」


わぁー。
相変わらずものすごく上から。
そしてどこから来るのかわからない自信。


でも、その笑顔が嬉しそうに見えるのは私の視力のせいではないと思いたい。



もうすぐ観覧車は下に着く。



「こんな嬉しい誕生日、生まれて初めてだよ」


その言葉で涙が出る。


「なんでいおが泣くんだよ」

「嬉しくて…」



暁斗くんが私のほっぺに手を添える。


「来年も、その先もずっと祝えよ」

「祝ってあげます」



暁斗くんが17歳になって初めてのキスをした。




ガコンッ


観覧車が少し揺れて、係の人によってドアが開けられる。


ぎゃーっ!!!!!

私は急いで暁斗くんを押して離れた。



ゴンッ!!

なかなかの鈍い音がしたけど、今は関係ない。


キスしてたとこ、見られた!?
恥ずかしさからそそくさと観覧車を降りる。




ガシッ!!

後ろから頭を掴まれた。

「テメェ…殺す気か?」


おわー!!
私が殺されるんじゃないか!!??





「暁斗くん!」

「あ?」


後頭部をぶつけたせいで、だいぶ不機嫌な暁斗くん。


「暁斗くんにとって、最高の1年になりますように。これからもよろしくね」



「仕方ねぇから一緒にいてやるよ」


上からの俺様暁斗くん。
そんな暁斗くんがあとで小さな声で
「ありがとう」
と言ったのが、忘れられない。