【完結】アシュリンと魔法の絵本

「だって、ラルフもわたしの『たからもの』だもん!」

 その言葉に、ラルフはぽかんと口を開け――すぐに真っ赤になった。

 自分のことを『宝物』と言い切ったアシュリンを見て、顔を手で(かく)す。

「ラルフ? どうしたの?」
「……いや、うん。真っ直ぐな子の言葉って、本当……心に()くね……」

 ルプトゥムはラルフの様子に再び「わっはっは」と笑い、ノワールはあきれたようにアシュリンを見てゆっくり息を吐いた。

「まぁ、とにかくっ! これからもよろしくね、ラルフ!」
「こちらこそ、アシュリン」

 ようやく気持ちが落ち着いたのか、ラルフは一度深呼吸をしてからアシュリンに手を差し伸べた。その手をつかんで、上下に動かすアシュリン。

 今日はこのまま休憩スペースで休むことにして、明日からまた旅が始まる。

 きっとこれからも、アシュリンはたくさんの思い出を作り、本に記録していく。

 そのとなりには、ラルフがいるだろうと考えて、アシュリンはにこっと笑った。

「『たからもの』がいっぱいできそう!」
「それはよかったね」

 ――自分の気が済むまで、ずっとずっと旅をしていこう。

 ――みんなと一緒に。この世界を楽しんでいこうと考えて、アシュリンはおいしい食事に集中することにした。


 ―Fin―