「でも、今回ばかりは助かった。――ありがとな、哀」 いつもよりは優しい声で私にそう言った薫は、照れ臭くなったのかそっぽを向き、それ以上何も言わず立ち上がる。 薫に優しくされたことが衝撃的で暫く動けずにいた私は、ふとあることに気付いた。 …………今初めて名前で呼ばれた……? これはもしや、底辺からの昇格……!? 嬉しさの余り勢いよく立ち上がったが、移動の速い薫は、既に見えなくなっていた。