横に並んだ芽吹と、何の違和感もなく手を繋いでいるのは今までがあったから。後ろめたいとか名前がないとか思っていたカンケイが、ちょっとは変化しちゃった。
元々配慮なんて欠片しかないけどもう、クラスの女子たちに何言われてもいい。そんなの比にならないほど芽吹の存在は強い。
「何笑ってんの」
「芽吹の、」
「うん」
「人気落ちちゃうね」
「俺人気だったの?」
特に女子からね、と言うと訝しげな反応を返される。
「芽吹の隣の席争奪戦、いつもあるよ」
「知らね。キョーミない」
自分のことなのにな。でも自分にもキョーミが薄いのは私だってそうだから何も言えないしすこし理解はできた。
沈黙と会話を繰り返しながら夜道を歩き、気づけば家の近くまで来ていた。灯りがついてるように見えない私の家に、何となく気が落ちる。
足を止めた私に倣うように止まった彼が、手を引いてくる。
「着いたけど」
「うん」
スマホを見ると0時近くの時間が表示された。別に寝静まっているわけじゃなくて、きっと両親は帰ってきていないんだと思う。
「送ってくれてありがとう」
「いーよ」
芽吹を見上げると、彼は目を細めた。
すこし速くなった鼓動を落ち着かせながら視線を落として息を吐き出す。
手を離そうと自分のほうに引く、けれど、なぜか芽吹が力を込めてきて離せない。それを何度か繰り返して思わず彼を見上げた。
「芽吹?」
「無理」
「わっ、」
勢いよく手を引っ張られて、足が蹌踉ける。
「やっぱ今日は一緒にいたい」
固い感触にぶつかったかと思うと抱き締められて。そんな言葉に息を飲み込んだ。
私のなかでぎゅうぎゅうに敷き詰められていく感情が処理追いつかなくて鼓動がまた速くなる。冬のように凪いだはずの、感情を、いつだって揺らすのは芽吹。
「いいよ。私も、」
一緒にいたい、って。誰かに言われたの初めてだった。
「うん」
返事に笑い声を含んだくせに離れて見上げた彼の顔は、取り繕ったような無表情が張り付いていた。
変、だと思ったけれど。繋いだままの手を引いて玄関の鍵をいつも通りに捻る。広がる静寂に芽吹を引き入れるのは初めてじゃない。
だけど。
「わるいことしてるみたい」
親に内緒で夜な夜な家に連れ込んでるみたいな、わるいこと。



