「俺"重い"から」
困ったような表情、でも口元は笑んで。
「もう離せない」
胸奥がきゅっと締め付けられる。
キレイで憧憬の存在に言われることに対する優越感、を簡単に凌駕する甘いことばに何だか急に目が熱くなった。
もう離せないなんて私のほうが。重いなんて私のほうが。同じ温度で居てくれたらいいのに、って思う隙間がないほどに包んでくれる狡さに視界が滲んだ。
「ありが、とう」
私がいいって言ってくれて。
⸝⋆⸝⋆
⸝⋆⸝⋆
「泊まっていっていいのに」
「それは…、今度ね」
苦笑した私に芽吹はきょとんとした表情で首を傾げた。
泊まっていけばいいと言った彼に首を横に振った私を家まで送り届けてくれるらしいけど、何だか申し訳ない気持ちになる。
星は瞬いて、さっきより幾分涼しい風が頬を撫でた。
「だってちゃんと挨拶できてないんだし、芽吹の親御さんに」
「それは俺もじゃんね」
「でもお兄さんとお姉さんにはすこし会ったよ」
「え、」
芽吹が足を止めるから、思わず隣を見上げる。
「いつ?」
「今日。芽吹の家行ったとき」
「ああー、」
嫌そうに眉を顰めた彼は溜め息を吐き出した。足を止めた私に、「まじで会ったの?」ともう一度確認するように首を傾ける。
肯定するように頷いて、あーあー言ってる芽吹に今度は私が首を傾げた。
「嫌?」
「そうじゃねー、けど」
「うん」
私の頭にポンッと手を置いた彼は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「アイツらめんどくさかっただろ」
嫌じゃないって言ったくせに、嫌そうな顔。芽吹がそういう表情をするのが意外だと思ったけれど。
そういえばよく遊ばれてるって言ってたから、ちょっと警戒心があるのかもしれない。
「そこまではわかんないよ、ちょっとしか喋ってないし。あ、でも私の名前知ってたみたい」
「はァ?」
「芽吹、教えてたの?」
「や、そんな覚えは……、あ」
斜め下に視線を投げた芽吹は思いついたように顔を上げて、なぜか再び嫌そうな表情を浮かべた。
「砂原だ」
でも、何でそこで砂原なの?



