強い力で肩を押されてビーズクッションに体が完全に沈んだ。反動で顔から離れた手で再び目元を覆うつもりで手を持ち上げる。
すこし滲んだ目の前で、私を見下ろす芽吹だけはキレイに見えて。
もし彼が特別美しくなかったとしても、きっと彼だけが私の世界の真ん中に居座り続けてる。わかるの。そう思ったらもう降参だった。
何か言いたげに肩を掴んだ手に力を込めてくる芽吹も、苦しそうな表情も、やさしさが捨てられない声も全部私のせいかな。
そうだといいな、そのままで私の平熱を崩してほしい。私のせいでって彼が言うならたぶんそう。私だって、彼のせいで感情が煩い。
「おれ、さ」
掠れた声が耳朶を打つ。
「おまえが横に居るよって言った時、正直怖かった」
ふ、と小さい笑い声を零した芽吹は、肩を掴む手の力を抜き、やさしく撫でてきた。
「彗が、何も言わなくてもいいって思ってるおまえがさ、嬉しそうにしてたりめんどくさそうにしてたりってそういうことに気づける自信があったのに。その時は何もわかんなかった」
「めぶき」
「こいつ俺に気使ってそんなこと言ってんのかなって。思うじゃん。そっから連絡全然寄越さねーし」
声は平坦だしいつも通りなのに、なんか。芽吹の感情は押し殺されてるみたいに、起伏がない。
「なのにアイツは彗を貰うとか言い出すし、彗は彗でアイツと連絡取ってるみてーだし。アイツあんなんだけど彗は打ち解けてるみたいな感じ出すし。普通に腹立つけど、……本当は彗はアイツみたいなのが良いって思っ、」
「待って」
ああ本当に、私のせいだ。
「何」
持ち上げていた両手で彼の両頬を包んで、すこし離して勢いよくまた挟む。パチン、と音が鳴って、無表情になってしまっていた芽吹が驚いたように目を瞬かせた。
勢いが良すぎたのかもしれない。色白な彼の頬がうっすら赤くなってきて、すこし後悔が滲んだ。
彼の頬から手を滑らせて首に腕を回す。抵抗なく簡単に私の腕のなかに収まった芽吹を引き寄せて、抱きしめた。
「ほんと何」
「芽吹」
残った涙が漸く目から流れていって、またこめかみを濡らす。
「私、いつも芽吹を傷つけてるね」
私は知らないうちにこの人を傷つけて困らせて、そればっかりだったのかもしれない。
「そんなんばっかでもねーよ」
「じゃあ困らせてる、いつも。いつもだよ」
「だから彗、」
「私ね、芽吹が」
だからこそ言えなかった、言いたかった言葉があるのに。初夏のような感情、この人を慕う言葉、言えずにいた、伝えたいこと。
私ね、芽吹のことが。
「すき」



