ビーズクッションに肩から沈み、突然のことで息を呑んだ私の、すぐ目の前に包帯が巻かれた手があらわれた。
思わず頭を上げると、顎を掴まれる。間近に見えたのはホワイトブロンドの髪、覗くチョコレートみたいに深い色の瞳。
「め、」
芽吹。
そう呼ぶより先に飲み込むように、彼の唇が私を塞き止めた。
「っめぶき」
一瞬離れた隙に告げる。真っ直ぐ見下ろしてくる眼は鋭利、なのに顎を掴んでいた手は強引さを無くしてゆっくりと頬を撫でる。
芽吹の指先が滑って耳朶を掠ったとき、彼は蠱惑に微笑んで。
キレイで、誰のものでもない芽吹の、その微笑みはすこしだけ苦しそうに歪んだ。一度も見たことがなかった。
だって、芽吹と私は。
頭のなかで花火が開く。
私のせいでって、私を責めた芽吹の表情を思い出した。それが今と重なって、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
咄嗟に口にしようとした、彼の名前。に、迷った私はまた微笑みを浮かべた唇にまた塞き止められる。
「すい」
何度も、何度も落ちてくるキスの隙で、芽吹は私を呼んだ。
呼吸もままならない。思考もままならない。痛い、苦しい、これはどこにどう生じている感情なのかわからない。
ただずっと。
強引なクセに彼は優しいままで私を奪うように呼吸を食んだ。
それでもやっぱり思う。私のせいでって思い続けて欲しい。私に恋われて欲しい。歪でもいい。何でもいいよ。
でも口に出せば、両親の彗星のように過ぎ去ってしまいそう。
だからこの瞬間、芽吹が私だけを希うことが、こんなにも。
「…彗?」
こんなにも熱い。
「なんで泣くの」
すこし冷たい指先が眦を拭った。歪む視界のなか、嗚咽が止まらなくなりそうだから両手で顔を覆って体ごと横を向く。
喉が絞められてるみたいに苦しくて、目頭があつくて、唇をどんなに噛み締めても止まる気配がない。
いつもは俯瞰で見れる自分がいまどんな表情をしているのかわからなくて、ただ、芽吹には見てほしくないって思った。
「彗、彗って」
鼻をすすると勝手に跳ねる肩を彼が掴む。
「こっち向けよ」



