一気に言い切るとすこし胸が苦しくなる。
「だから、芽吹が横に居てって言ってくれたのがうれしかった、し。申し訳なかった」
机の上のリンゴジュースを凝視しながら、そう言うと、ちょうど良いタイミングだと言いたげに氷が音を立てて動いた。
それを最後に訪れた沈黙は、私が次の言葉を考え続けていたせいで。どうしても上手い言葉が見つからない。
本当は言いたいことたくさんある。
芽吹に、言わなきゃいけないことがある。
ぐるぐる回る思考の波に迷っていると、彼が溜め息を吐き出した。
「何で申し訳ないって思うわけ?」
芽吹の言葉に一瞬だけ視線を上げれば、いつも通りの無表情にすこしだけ柔らかさが宿っている。
苦しいはずの胸のなか、勝手に鼓動が跳ねた。
「そ、れは、言えない」
「…は?」
思わず俯く。芽吹はおどろいたような声を出した。
「何で言えねーの?」
「わかんない。言えない」
「言えよ。俺には言えねーって?」
「そうだよ、芽吹に言えない」
「だから何で?」
「芽吹を困らせたくない」
太腿の上で自分の手をきゅっと握りしめる。だって、これ以上困らせたくないって本気で思ってる。だから早く話を済ませて、そのためにここに来たのに。
結局言いたいことが纏まらなくて、言おうと決めたことも芽吹と目が合うと尻込みしてしまう。
何も言わなくていいって思い続けてきた私が悪いのに。
彗、って名前を呼ばれる。返事をしながらも、顔を上げられずに俯いていると、芽吹が溜め息を吐き出して立ち上がった。
出ていってしまうと思っていた瞬間に、ふわりと彼の香りが届く。
俯いた私の、髪に触れて。横にきた芽吹はもう一度私の名前を呼んだ。星の名前。平坦な声色。彼の視線が私に向いていることは痛いほどわかる。
「ごめんね……、芽吹」
私はやっぱり何も持ってない。
今、芽吹が私を呼ぶ度に、私に声を投げかける度に思う。私は何もないから、芽吹に依存しているのかなって。
私の髪がまた頬を擽ったことで彼が手を離したことが解って、視界がまた暗さを増した。
再び流れた沈黙を切るように、肩を押されて私の体が芽吹と反対側に勢いよく倒れる。



