こわれて星




不思議そうな顔で首を傾げた彼女は、きれいな長い髪をふわりと揺らして、即答した私を見つめる。



「違うってことはきっとあれだよ。"まだ"彼女じゃないってことだよ。ね? 糸川 彗ちゃん?」



柔らかな声が近づいてきて、彼女の後ろから姿を現した芽吹のお兄さんは微笑みを浮かべていた。


背が高いな、なんて呑気に思っていたけど圧迫感を感じる。



「それは、その、何ていうか」



やっぱり何て説明すればいいんだろ。何とも言い難い。芽吹の家族に関係を説明しようものなら面倒臭いことになりそう。


思いついたその考えに押されて、口を噤んだ。私はたった今、その本人と向き合おうとここに来たのに。



「まぁ、どんな関係であれ、夜に尋ねてくることをあの子が許すくらい親しいってことよね」



お姉さんは溜め息混じりにそう言って、お兄さんの方を見た。



「そうだねー。僕たちにはまだ内緒みたいだけどね」



にっこりと微笑んだ彼に、彼女は肩を竦めて髪を払い除ける。それで私に笑顔を見せた2人は、揃って、芽吹をよろしくね、と言った。


頷く事もできずにただ驚いていた私に、「時間だからもう行くね」と2人は車の方に急いで行く。



「待っ、何で私の名前っ」



知ってるんですか。


車に乗り込んで、道路に出てしまいそうだった2人にそう問うと、似た表情できょとんと首を傾げる。それですこし困ったような顔で。



「「今度ね」」



と息ぴったりにそう言って、去っていった。


すべてが急だった2人を見送って動揺が落ち着く。夜の空気。本来の目的にやっと目を向けて、門のボタンを押した。


取り戻した平静が、壊されないうちに、って。思い込んでいたのに、証明できない関係性の名前が脳内を巡る。


2人の言葉を聞いて感じた後ろめたさ。彼はやっぱりあいされている。そんな彼を、私は誰にも渡したくないなんて今のまま言えない。


今のままじゃ駄目なの。


玄関のドアが開いて、姿を現した彼に目を細めた。ホワイトブロンドが目に染む。



「彗」



私の名前だけを言った芽吹は、すこし驚いたような表情を浮かべていた。



「芽吹、話がある」



Tシャツの裾を握り締める。震えてしまいそうな声でハッキリと音にすると、あの波の音が聞こえた気がして。


今いちばん、言わなきゃいけないことを、星とともに思い起こした。