「花火、打ち上げの方、したいかな」
「え?」
掴んだままの数本の花火をロウソクの火に近づけた。
「ちょ、彗ちゃん?」
ぱちぱち、火点く。
勢いよく飛び出た火の星がアスファルトで跳ねた。
「シャレになんないってぇ」
困ったような口調に合わない笑顔の彼は立ち上がって距離をとる。温い風を押し退けるように私も立ち上がれば、火が揺れた。
小さく激しい音を吹き出し、彩る色とりどりの花火に、流れていく独特の匂いに。夏っぽいことって、気持ち伴わないと意味がない。
そもそも似合いもしなかった脆弱な私っていう、悲劇のヒロインっぽい心持ち、気持ち悪くまだ居座っている。
取り戻したふてぶてしさが未熟と相まって、特別ワガママで最低で嫌な性分になって、客観視した私の印象になる。
シャレになんない。夏に追われて、夏に憧れて、夏に自分を乱されて。やっぱり違う、私は私で最初から。
「せーのっ」
最初から、選んでいた。
「危な、」
火が舞う。
手放した花火は風に攫われ、空気に火の星を走らせた。
海に馴染む前にきらめいて酸素を燃やす煙が咳を引き起こす。ずっとずっときれいなつもりの朱い火、私のせいで良い。
ゆっくり舞った花火は重力に逆らわないまま海に沈み、その音すら波の音に消えた。残った煙の気配だけが届いて、それに黙って目を逸らす。
呆気にとられたような砂原は、海を眺めたままフリーズしていた。
「打ち上げ花火、できたね」
「いや無理あるよ流石に無理矢理すぎだってマジで」
句読点打つ暇ない彼の言葉に笑ってしまう。
無理矢理って本当にそうだけど、知らなくても大丈夫。空を切った花火は私の彗星で、過ぎていった煙は私の丁寧。
知らなくても大丈夫。私は、私が知っていて欲しいことだけ噛み砕いて伝えたいって厄介な人間。
でもその厄介、今だけは抱きしめた。
「砂原」
「んー?」
笑顔がない引き攣った表情が私に向く。
「楽しいよ」



