風が後ろから吹く。
顎で揃えられた私の髪が靡き、顔にかかって。良かったって安心した。
何でもないって顔、していたい今に、指摘されたくない。今私ぜったい、間が抜けた顔してる。
「本当のことって誤魔化せないよね? 今冗談だったとしても口に出したならそれ、本心だって。あまり自分のこと話さない君なら尚更」
そうでしょ?
って言って微笑んだ砂原に、海を見るふりをして視線を逸らした。
「そーかもね。そーかも、でも言えない」
「言えないんだ? もうほぼ確定事項なのに」
「言わない、し、言えない」
言えない。言わない。恋。
私のせいでって言われたときの罪悪感は消えないクセに。私のせいでって、私のこと覚えていて欲しいとか本気で思ってる。
無理に言わせたいわけじゃない恋う言葉も、無理に引き出したいわけじゃない溶けるような甘さも、それじゃあ駄目なの。
密かでいい。私に、恋われて欲しい。ずっとわかってるのに言えないのは、自信がない、傷つきたくないってただの保身。
芽吹で、私の内側の穏やかな冬が、揺れた。
「砂原にそういうこと言っても、芽吹じゃないと意味ないじゃん」
揺れた。
波の音と共に、ロウソクの火も。冬も。
夏に当てられてしまった。夏なんてなくなればいい。本当は思えない。恋は夏みたいなものだと信じてた。
熱く燃えて、訪れはキラキラ、焦がれて壊れて抱きしめて。水色で、感情のせいで胸の中で花火が打ち上がるような、心地になるんだって。
信じてた。それが揺れる。
「あーあ、俺ホントに怠いことしたな。ただのお節介ヤローじゃん」
「本当にね」
「彗ちゃんは少しくらい俺のことフォローしてよ」
星を見上げた。
キラキラ、キラキラ、鬱陶しい。
今いちばん会いたい。
今、いちばん。言わなきゃいけない。
「ありがとう、砂原」
「んー?」
近くにあった花火を数本掴む。
「言いたくないこと言わせて、ごめん」
彼の笑顔のこと。本当は言いたくなかった筈。私が言えないことがあるように、誰にでも存在する丁寧な部分に。
「いいよ。俺も同じだし、ね」
海に逃げずにロウソクを見る。揺らめいた灯りに、まだ何も自信なんてない。それでも。
唇を噛んだ。



