こわれて星




夏に当てられてしまったから、らしくない。らしくないけど、これが自分だって言い張れる自信がない。



「砂原は、私が芽吹に恋愛感情を抱いてるかってこと聞きたいんでしょ? …言えないよ」

「何でって聞いてもいい?」

「私の名前、彗星が由来」



ちらりと彼を見ると、砂原は堤防に腰かけて、私と同じように海の方を向いていた。


藍の空を眺める。淡々としていられる私の、丁寧なとことか、気が平坦。



「両親の恋愛の切っ掛けが彗星なの。だからそれを私の名前にした、大切な恋心で大切な思い出だからって」



幼い頃、思い出が込められたアルバムを開いて色んな話をしてくれた笑顔の両親を思い出す。


10に満たない歳の頃、暗い部屋、ひとり静かにアルバムを開いていた母の背を思い出す。


どっちも鮮明。鮮明な思い出は刻まれているのに、私の名前に込められたものだけが色褪せた、気がした。



「あんなに想い合っていても無くしちゃってる。昔は憧れてたそういう感情も、結局意味ないし。わかりたくなかった、」



私の名前、意味なんて何もなくなったって思って。流れた瞬間に恋がうまれたから、星が過ぎ去ってしまっただけなのに。


わかりたくなかった、恋が何かって。だって私は、私が、言うことができない。


恐怖心に迫られるくらいならずっと安全圏で居たいとか、そう思ってる。恋は初夏みたいな感情であるべきで、私は冬しか思えない。


それならいっそ忘却術で。
なんて器用に済ませたかった。



「ねえ、彗ちゃん」



波が鳴る音に息を吐き出す。


どこかでずっと詰まってた隔てが呼吸の原理で外に排出、四散。ぶらぶらさせていた足を上げて膝を抱えた。


いつの間にか冷えた足についた砂を払い、膝に顎を乗せる。



「まだ聞きたい?」

「君の話はいくらでも聞きたいよ」



砂原の笑い声に、隣を見ると、彼はすこしまじめな顔をしていた。



「だって面白いこと言うよね、彗ちゃん。わかりたくなかったってことは、本当はわかってるってことじゃん」