つけた花火の独特な匂いの煙に彼が霞んだ。発光する赤と白に、アスファルトが照る。
「そっか。でも、これ癖だと思ってる?」
顔を上げると、砂原は自分の笑顔を指さしていた。
いつもの笑顔。彼の印象がそれで成り立ちすぎて癖、なんだって、確かに思っている節があったかもしれない。
頷くついでに見えた彼の青の花火で、笑顔に白が反射する。
「ま、実際癖なんだけど」
「癖だとしても、」
薄い煙越しの笑顔。
「ちゃんと本当なんでしょ」
嘘なんて思えない。
厄介でウザいだけの人に認定していれば良かったのに、ひとつ疑問持ったらそれだけに至らない、至れない気持ちだって。
別に知らなくてよかった。なのにいつから変わったのかなんて、あの冬みたいな感情に掴まれてからずっとだ。
ずっと、理解する勇気は欠けてるのに、ずっと理解したいって願ってる。
知り続けたい。冬のひとのせいで。
「本当のことって誤魔化せないよ」
知り続けてる。冬のひとのお陰で。
いつかの夏の楽、生を実感する、私に。そう言ったあの人の表情がちょっと苦しそうに歪んでいたのを思い出した。
本当のことって誤魔化せない。本当のことってわからない。表面化したら取り消せない。無かったことにできない。
受け売りの言葉を口にして、後悔した。
私が音として吐き出した願いは無責任で、最低で、ちゃんと本当で、枷だ。
「俺はね、彗ちゃん。目の前にいる人を楽しませたい、元気付けたいって今まで思ってきた」
消えた花火に波の音が鳴る。
「だからずっと笑ってる。無理してないし嘘でもないけど今日ちょっとだけさ、キツいなって、笑うのやめた。そしたら彗ちゃん達に会った」
波の音が。
「気づいたららしくないことしてるよ今。他人の関係に首突っ込むとか怠いことしちゃってる、ごめんね」
ポケットからスマホを取り出して操作した砂原は、明るい画面を私に向けてきた。眩しさに目を凝らす。
トークルームの名前は見覚えのあるもので、メッセージのやり取りがほぼ一方的に送られていた。



