こわれて星




呟くような声に、気づかれないように息を吐き出した。



「そうだね」



ますます、色々、何も見たくなくなる。


知らない知らない、知った先で失望しないように。安全圏だけで行動範囲済ませているの、テキトーな逃避っぽくて駄目だなあ。


私は、星にまつわる話のせいで、名前を言いたくもない感情を知っている。


私は、星にまつわる名前を、呼ばれたくない。



「彗星」



砂原がそう、呟いた。



「彗星からきてるの? 彗ちゃんの名前」



走る星の名前に肯定の言葉を返す。


無駄に飾られた夜空に、名前の由来を思い出した。


両親が出会う切っ掛け、互いを選んだ切っ掛け、それがすべて彗星だったから。うまれた私にもその名前はつけられた。


彗星。きれいなものばかり。


私は、星に焦がれたことなんて一度もない。きれいだとか一度も。流れて欲しいだとか一度も。


あんなに両親の恋情の切っ掛けになった彗星も、私の名前に閉じ込められて10年も経たずにきらめきを無くした。


だから私は、名前も言いたくない感情を、容易く口に出せない。



「いい名前だね」



なのに彼といったら。
フツウのテンションでそんなこと言えるとか。


火が消えたからついでに砂原を見ると、やっぱり爽やかで、何でもなさそうに彼は笑顔を浮かべている。



「そう、かな」



消えた花火を水のなかに投げ入れて、新しい花火に火をつけようと手を伸ばした。



「砂原は何でいつも笑ってるの?」



何でもなさそうな顔されるから、なんか私が引っかかる。意味なんて特にないのに。



「ごめん、今日上手じゃなかった?」



踏み込みすぎた質問に、そう返した砂原は、目が合った私に眉を下げる。でも口元はわらっていて、すこし違和感。


いつも笑ってるってわけじゃないのに、残る印象が笑顔だから。見せる時々の表情は違和感でずっと疑問。


自分の内側見せてるみたいで。



「上手下手言ってるわけじゃないよ」