ロウソクに火をつけて、花火の袋を丁寧に開ける砂原に、スマホのライトを向けてみる。眩しそうな顔をした彼は俯いて、手持ち花火を種類ごとに分けた。
慣れた様子に問うと、つい最近友達としたばっかりだと砂原は笑う。しゃがみこんで花火をつまみ上げる。今年初めてだな、なんて思う。
夏に連想されるものはかなり多いけれど、花火、プール、代表的なものはいつもする前に夏が通り過ぎていって。
なんだかんだ言って手持ち花火をするのも久しぶりで、ちょっとだけ、懐かしい気分になる。
「始めていいよ」
「うん」
先の方をロウソクの火に近づけて、スマホのライトを消した。街灯とロウソクの火で十分な灯りに、人工的なものは退散する。
火が宿った花火に、急いで手を海の方に向けた。黄色と緑とオレンジの、火花が音を立てて飛び出していく。
独特な匂い、薄い煙。砂原が私の名前を呼んだ。
「火、ちょーだい」
近づいてきた灰色の花火に頷く。
「ロウソクあるのに」
「察してよ」
一体何の話をしてるの、かな。知らない。
金みたいに鮮やかな火がぱちぱちと弾けて、砂原は離れていった。
「キレーだね」
「うん」
「ほんとはさ、打ち上げ花火したかったんだよね」
「それはちょっと、やだ」
「ん。そうかなって思って」
私の火が消える。新しい花火を選んで、ロウソクに向かい、火を点ける。赤、白、飛んでいく火は夜を割いて。
星みたいに小さな火花が走っていく。
それですこしだけ、苦い出来事まで思い出した。星が走る。忘れたはずのことが頭の隅からまんなかに躍り出た。
「彗ちゃん見て。今日天気良いから、」
やけに早く終わった花火を、水が入った容器に入れる。ジュ、とすこし鳴った消音を無視するように、砂原が指さす方を見た。
暗い、黒い、藍の空。浮かんだ弓張月と飾りの星。それを映した漣をつくる海。目を細める。
「星よく見えるね」



