「急がば何とかってやつ?」
「それはそうだけど今は違うね」
慎重にパネルを押して会計を済ませると、ひとつ穴が空けられた箱を差し出された。
こういうところはしっかりしてるサキの笑顔の圧に、仕方なしに紙を1枚引く。引いた紙をじっと見た私にサキは明るく笑った。
ハズレ、と書かれたカラフル。
「残念でした。またチャレンジしてね!」
「なんかサキ、違うバイトやったほうがいいんじゃない?」
仕方なく引いたものでもハズれるとなんか、ちょっと残念な気持ちになるの、どっかで偶然を期待しがちな心理。
丁寧に袋に入れてもらったアイスを受け取って、ハズレの紙も袋に突っ込む。辺りをキョロキョロと見ると砂原はいなかった。
「またね、サキ」
「気をつけて帰ってよ? 夜は物騒なんだから」
ひらひらと手を振ってサキの笑顔に振り返る。そのまま前を向き、自動ドアを通り過ぎて外に出ると生ぬるい風が身を包んだ。
今日はすこし暑いかも。扇風機の冷風を強に設定して何とか乗り切れそうな、そんな無駄な暑さ。
広すぎない駐車場を突っ切って、帰路につく。袋をぶんぶん振り回していると足音が聞こえて立ち止まった。
"夜は物騒なんだから"。サキの言葉を思い出す。そんなこと無いと思うけれど念の為に振り返った。
本当に物騒なことなんて何もなかった。
「何してるの? 砂原」
街灯に照らされた無駄にきらきらした笑顔。
「脅かそうとしたのに残念、バレちゃった」
すこし離れたところで立ち止まった彼は、コンビニの袋をひらひらと振る。首を傾げると砂原は歩き出して。
私の目の前で足を止める。袋の中を見せるようにひらいた彼に、私はそれを覗き込んで次に彼を見上げた。
「俺も帰りたくないんだよね」
鮮やかな色のパッケージに踊る文字。笑った砂原は、親指を立てて自分の外側に向ける。
「暇潰ししない?」
⸝⋆⸝⋆
⸝⋆⸝⋆
海が鳴る。近くで。
「夜は危ないらしーから気をつけてね、彗ちゃん」
「砂原の方こそ」
砂原が花火をしようと行った場所は、通学路の近くにある海の、堤防。



