「えっ?」
にこにこ笑いながらサキが私から視線を逸らし、私も同じように視線を移す。
「こんばんは、彗ちゃんと崎田ちゃん」
「げ、」
「砂原くんじゃん。やっほー」
いつも通りの爽やかそうな笑顔。
「崎田ちゃんはともかく、げって何? 彗ちゃん」
耳に届いていたらしい一文字を問われて何となく面倒臭い。砂原という人の指摘は、細かいことが多い気がする。
サキの手をはずして、「それ挨拶」と続けると、彼は意味がわからないと言いたげに眉を顰めた。
「彗ちゃんの挨拶って何種類あるの? 先月は "うざい" が挨拶って言ってたのに」
「砂原くん真面目に捉えすぎ。糸川、説明面倒くさがってるだけだから。あんた完全に丸め込まれてるだけだから」
「そうだったんだ。彗ちゃんと俺だけの挨拶? を提案されてるのかと思ってたよ、秘密的な感じの」
「ポジティブな御意見ですけど糸川、実際どうなの、ってちょっと!」
面倒臭くなりそうな応酬からさり気なく逃げていると、サキにTシャツの裾を引っ張られる。
「また来るね、サキ。もう帰る」
「あんたさっきまで家帰りたくないよ〜ぴえ〜んって言ってたクセに?!」
「そんなに可愛子ぶってないし」
今日は相手できないって言ったクセに次は帰してくれないつもり? なんて拗ねてみようかな。そんなことしない。砂原が面倒臭いから。
「へぇ、帰りたくないんだ?」
サキの後ろで口許をゆるめる砂原に内心溜め息をついた。
ほら、面倒臭い、ぜったい。
夏祭りの時みたいに面倒臭い方向に向かっていく予感がする。
アイスコーナーからふたつで1セットのあれだけ選んで、サキを連れてレジに急いだ。彼女はようやく店員みたいなことをし始めて。
現金支払いを選び、硬貨を機械に入れる私を、怪訝そうな表情で見ていた。
「急にどーしたの糸川」
「どうもこうも面倒臭そうだから早く帰ろうと思って」
「急いでるとこごめんだけど、これ引いて貰っていい? そのシリーズのアイス、いま買ったら特典つくんだよね」
「ええー、要らないよ」
「1枚引くだけでいいから。あと、あんたパネル連打しすぎて反応してないから」
パネルを見ると、確認ボタンから指がずれている。



