無駄なことばかり考えてるから、芽吹に会う理由を探せない。
「糸川はなんか急いでるね」
「え?」
呆れた声で私を覗き込んでくるサキは、声色の割にすこしうれしそうに笑っていた。
「急がなくてもいーんじゃない? 先、長いよーいろんなこと待ってるんだよ」
ね、って頷く仕草で彼女は私に言う。
急いでいるつもりは1ミリもないけれど客観的に見たらそう感じるものなのかもしれない。だって、焦ってる、胸中。
モヤモヤしてる。やりたいこととやるべきことより、やるべきじゃないことが目について、一点から動けないことにモヤってる。
自分の内面をじっくり見ることを避けたい。自分のなかにうまれた感情をうまく捉えて飾らず言える、サキや芽吹が羨ましい。
「私、サキになってみたいなあ」
「何でよ。唐突すぎ」
本気、と付け加えた私はふたつで1セットのアイスを探して。特に拘りがないフレーバーを吟味する。
彼女はやっぱり嬉しそうな笑い声をまじえて。
「私は、私みたいになった糸川より今の糸川がいいな。だってあのクールで面倒事嫌いなあんたが、どーでもいい事うだうだ悩んでるんでしょ? 貴重すぎてなんかちょっと嬉しい」
やっぱり、おとなみたいに思えた。
「なーに悩んでんのよ。恋愛相談? 人生相談? 何でも聞いてあげるからねっ」
「れ、」
慌ててサキを見ると、両手で両頬を摘まれて伸ばされる。笑顔の彼女に頬をむにむにと押されて思わず抗議しようとした。
うまくやめてと言えなかった私にサキは笑い始めて、つられるように笑ってしまう。気をよくした彼女がにじり寄ってくる。
冗談半分に後ずさったその時、ちょうど自動ドアが軽やかな音を響かせて開いた。
完全に仕事を忘れて面白がっているサキが、私の頬を伸ばして無理やり笑わせてくる。
いらっしゃいませー、ってやつ、言わなくていいのかな。なんて思っていた時、ドアから真っ直ぐ誰かが歩いてきた。
「楽しそうだね」



