人熱れから脱した私と彼は、終盤の華やかさを咲かせる花火を無視したままだった。
「思ってたのと違った?」
縁側の縁に腰掛けて、足元を見ていた私に、彼がそんなことを言う。顔を上げて隣に視線を移せば、芽吹は無表情で空を眺めていた。
「俺、そんないい奴じゃないよ」
ひらいた明るい光が、彼の横顔を照らす。
いい奴じゃないなんて、芽吹が言うことじゃない。私の方が余程嫌な奴でもっと最悪。いい奴じゃないなんて、なんて。
目が合う。
深いチョコレートの瞳に光を刺す鮮やかさは、雄弁に色を閉じ込めた。
「彗が俺に何思ってんのか無理に聞かねーけど。でも、引き際とかあるなら教えて」
花火がさんざめく。
「それまで勝手に待つから」
芽吹、それ、何か持っている人しか言えないことだよ。
私は何もない。何も言わなくてもいいって決め込んで、思ってることしまい込むけれど。私、何もない。
わからないから。
「すっごく、長くなっちゃうかもよ?」
「でもいーよ。横居てくれんでしょ」
私がどうしたいのかすら不明、的確な指示待ちみたいな受け身が染み付いて、主体性がいつの間にか殴殺。SOS。
助けなんか要らなかった。だってそれでもいいって、芽吹のやさしさに遠慮無しに流されているだけである程度満たされるから。
駄目、わかってる、本当はやるべきじゃない。いつから始まったのかな、いつ掴まれたんだろう、この冬みたいな感情。
夏の暑さで表面は汗さえ滲むのに、私の内面はいつでも冬だ。
「居るよ。横」
染み付いて離れない、真っ白で静かな冬。
「芽吹がいいよって言う限り」
「いーの? そんなこと言って」



