黙った私に、芽吹が薄く笑う。
冷たい手が頬に触れて撫ぜる。
私のせいだって言う眼は鋭利、いつもよりもっと冷ややかな色を沈めてるみたいに貫いてきた。
「彗のせいで、俺ん中ぐちゃぐちゃだよ」
はじめて見る薄い笑みの切なさに胸が鳴る。苦しくて、ぎゅってなって、焦って焦がれて。胸が鳴る。
「言わなくてもいいって思ってる彗の気持ちとか、嬉しそうとか、つまんなそうとか。真っ先に気づいて俺、バカみたいに舞い上がって」
「芽吹、」
「意味わかんねーくらいおまえのことばっかりになってる」
苦しそうな表情を広げた彼は、それでも私のことを見ていた。私が見ていなかったものを全部詰め込んだような、表情で、私は。
私のせいで、なんて悲劇のヒロインぶってしまう心持ち、気味悪いから捨ててやる。それでも彼は、思い続ける。
私のせいって、芽吹の心の根源なら。
「彗は、俺を何にしたいの」
芽吹は、私を何にしたいの。
「答えてよ」
ひゅう、と突発的な音が聞こえたかと思うと、大輪の花火が夜空に一瞬で広がった。
芽吹の背景に浮かんだそれは、彼の表情をはっきりと見せて、ゆっくりと消える。花火が始まったことに湧く声がざわざわと聞こえ、次に次にと夜空に明るく打ち上がる。
「私は、ね。芽吹、」
声が震える。
何にしたいなんて、言ってしまえば終わりそう。言ってしまったらこの手が離れていきそうで。
どこまでも狡い言葉で引き止め続けて、まだ待ってくれるこの優しい人を、私っていう枷で縛って。
隣にいてほしい。なんて言ったら芽吹はいてくれることを、私はずっと知っている。
「私は、芽吹に」
花火の音で誤魔化されて欲しかった。
「彗」
芽吹が目を伏せる。
思わず一歩後ずさると、背には建物の壁が当たって、彼は逃げ道を無くすみたいに私の顎を片手で掴んだ。
もういい。なんでも。私、今まで何を意地になってたのかな。どうでもいい。芽吹のことを取り合ってバトってた女子たち以下の、ずるくて最低な奴でいい。
出会い方なんてもう変えられない。
私は、
「キスして芽吹」
彼を渡したくなんかない。
目を閉じた。



