こわれて星




黙っていた芽吹が不意にそう言う。隣を見上げると、彼はすこし固い表情で、私を見下ろしていた。



「芽吹?」



前に見たことがある表情に、頭のなかで疑問符がうまれる。何も言わなくてもいいって思っているのは私も同じだけど、芽吹もそう。頑なに。


どうしたのって訊いて、拒絶されるのが、怖い。怖いってたった今気づいた。


拒絶されなくても、怖い。って、たぶんずっと知っていたはずの感情が、勢いよく名称無しにぐるぐると胸をざわつかせた。


押し黙った私と芽吹をよそに、人通りは様々な声と音に溢れて、この空間だけ静かでスローモーションで。


私は、芽吹に、何か言ってほしい。なのに、私は言いたくないとか。無性に最低な願望で目を逸らすようにスマホを見るふりをした。


画面に浮かんだ時間に、相槌をうつ。気温と人混みと浮き立った気持ちで熱かった何か、冷ましたくて。


なんて、言い訳だ。



「もうすぐあの辺、花火上がるよ」



空気を割くように砂原がそう言って、身を乗り出しながらすこし遠くを指さした。砂原は悪戯っぽく笑みをつくる。



「俺と行く?」

「行かない」



砂原のいつもの冗談に、芽吹が目を細めた。



「今日は俺の。おまえは綿飴売ってろ」

「は? 何言ってんだよ深山。付き合ってるわけでもねぇのに?」



笑い飛ばすような声。いつもみたいなきらきらしい笑顔に、芽吹は顔を顰めて、チョコレートの眼で睨みつける。


はじめて見るその表情におどろいていると、砂原は挑発気味に彼を見て、私の二の腕を掴んだ。



「彗ちゃんはおまえのじゃないから尚更おまえはカンケーねぇよ」



引っ張られて店の台によろけた一瞬で、砂原の手が離れる。綿飴が落ちないように体勢を戻して、顔を上げると、芽吹が砂原の胸ぐらを掴んでいた。


彼が買った水色の綿飴は形を崩し台の上に置かれて、砂原は笑ったままだった。