可愛らしい柄がプリントされた袋、苦しいほど甘ったるい香り、白のTシャツがなぜかよく似合うその人。
眉間に皺を寄せていたその人は、私と目が合うといつものような爽やかな笑顔を浮かべる。
「奇遇だね、彗ちゃん」
「久しぶり」
何でここにいるんだ、砂原。
「深山おまえ綿飴なんか買うのか。ガキかよ」
「そのガキみたいなもん売ってる奴に言われたくねーよ」
「うるせぇな、親がこういうの好きなんだよ」
砂原は鼻で笑いながらそう言って、隣を見ると芽吹は無表情で綿飴を凝視していた。
「水色ひとつ」
「はいはい」
やり取りを最後に一方的な睨み合いが打ち切られ、店員と客に戻る。辺りはもうだいぶ暗くなってきていて、提灯の鮮やかさと店の灯りで賑やかを保っている。
待つ間、周りをキョロキョロと見ていると砂原の声が私を呼んだ。どうやら会計まで済んでいたらしい。
「彗ちゃんにはこれ」
「え?」
すこし小さめのピンクの綿飴が目の前に差し出される。砂原は私の目線に合わせるように上体を屈めて笑顔を見せた。
「良かったらどーぞ。サービスだから他には内緒ね?」
食べものに釣られるなんてらしくないのに。思わず受け取ってしまったピンクのふわふわに、顔が緩みそうになって強ばらせる。
「…ありがと」
喧騒にかき消されそうな声量になってしまう。ただ単純に嬉しいって言うのも恥ずかしい。笑顔を浮かべていた砂原は、ちょっとだけ驚いて。
そのあと吹き出すように口元を手で覆って目を細めた。
「綿飴すきなの?」
「うん、すこしだけ」
「また来てよ、彗ちゃんになら幾らでもつくるよ俺」
サービス精神がよく出来た人だな、なんて関心する。笑顔も。明るい笑顔をつくる砂原に、すこしだけ納得してしまった。
「彗、もう行こ」



