それはそうだと思う。
でもそれって、芽吹が珍しく接点を持つ女子ってだけで名称は何も無い。
特別なのは、私にとって芽吹が。
「アイツのあんな様子見たの初めて。今まで俺に何言われても我関せずって顔してたクセにね」
「でも芽吹、」
つい口に出た言葉に、あの夕日を思い出した。暗い煌めき。あの日の彼は薄気味悪いほど優しかった。
「芽吹は、砂原に負けたくないって言ってた。それも特別だと思う」
砂原は長い溜め息を吐き出して、またいつもの笑顔を浮かべる。
「それを彗ちゃんに言ったってことは、彗ちゃんがやっぱり特別ってことだよ。俺の前じゃアイツ、何も言わねーの。うぜーなホント。一発ぶん殴りたいよ」
「やり返されそうだけど」
「彗ちゃんが喧嘩しないでって言ってくれるならしないけどね」
無駄に決め顔を披露してくる彼の面倒臭さにつられて溜め息を吐き出した。
「勝手にして」
⸝⋆⸝⋆
⸝⋆⸝⋆
カラン、とコップの氷が音を立てる。
呷ると溶けた氷で薄くなったリンゴの味が後味悪く口腔に広がった。
「美味しくない」
思わずそう言った私に、後ろから手が伸びてきてコップを奪う。滴った水滴が手首まで伝い、それを放って後ろを見た。
眠そうな眼でリンゴジュースを飲む彼はちょっと眉を寄せて、用が済んだと私に渡してくる。
「ちょっと不味い」
「芽吹の髪色にちょっと似てるね」
「一緒にすんな」
伸びた前髪をかきながらベッドに寝転んだ芽吹は、欠伸をして私を見た。私は身を乗り出して彼の額に触れる。
すこしあつい。本当に眠いことを実感して、軽い力で額を叩いた。
「何?」
「今日体調悪いの?」
「何言ってんの。ちょー元気」
私の手を掴んで、体ごと此方を向いた芽吹は気だるげな表情で微笑む。
「良くなかった? 彗チャン」



