「深山、おまえ何してんだよ」
そうだ、何してるの。
砂原の言葉に心底同意した。
「体験してほしかった」
「そんな体験だれがしたいかよ」
本当だ、誰がしたいの。
砂原の言葉に心底同意した。
でも、でも、でも。
わかんない、芽吹の突発的なとこ、急に教えられた気がして貪欲が顔を出す。知ってみたいと思ってしまった。
わからない。
「なら程々にしといて」
「は?」
まだ中身は入ってる缶が、私の肩を通り過ぎて渡される。シャツの白が手の前に迫り、昼のことなんか思い出す。
「今日はじゃーね」
ふっと離れた白に馴染まない薄茶を見ていた私の、手がそのまま掴まれた。
勢いよく引っ張られて足を踏み出す。次顔を上げたときは芽吹はもう背を向けていた。つられるように駆ける歩道、足が縺れない。
私はこんなに早く走ったことがない。いつも、真正面から向かったことがない。
手、掴まれてるから離れる訳がないのに追いつきたいとか思い始めてる。
「芽吹っ、」
「なにー」
「どこまで、行くのっ?」
「彗の家」
どこまで走ったのか景色を見ていなかったせいであやふやで、止まったときは芽吹の家の近くだった。
肩で呼吸を整えて、ゆっくり歩き出す背をまた追う。陽はだいぶ傾いていて、橙が目を突き刺すように存在を示していた。
私の家。芽吹は振り返ってすこし眉を下げる。
「手、まだいい?」
「今日は、うん」
「明日までにしてくんね」
「だって芽吹、」
芽吹、私のものじゃない。
「芽吹、オールできないじゃん」
「そういう問題?」
「そういうことじゃないの?」
芽吹は、私のじゃない。



