悪事通報アプリ

『わ、私も勉強中で……』
教室の空気は感じ取っていたはずだけれど、花乃はめげなかった。

真っ直ぐに美羽と対峙している。
もういいよ。

やめようよと声をかけるつもりで席を立った、その時だった。
『へぇ? わかった。蒼、音楽消して』

美羽がそう言ったのだ。
蒼は不服そうな顔をしながらも美羽の言いなりのようで、すぐに音楽は消された。

教室内に望んでいた静寂が戻ってきたはずなのに、その静寂は肌を切るように緊張感があった。
『……ありがとう』
花乃はそう言い、自分の席へと戻っていったのだった。

よかった。
ひとまず何事もなかった。
そう、思ったのは勘違いだった。

この出来事があった翌日から、美羽たち4人は執拗に花乃に絡み始めたのだ。

最初は机の上に置いていたペンがなくなるとか、プリントが少し破れているとか些細なことだった。

だけどそれらはあっという間にエスカレートして言った。
美羽たちは花乃の机にラクガキをして、上履きをゴミ箱に捨て、そしてお弁当を床にひっくり返した。