悪事通報アプリ

「痛ったぁ……」

と声を発したとき、校舎裏にある大きな木の陰からひとりの女子生徒が姿を見せて、駆け寄ってきた。

同じクラスの小寺花乃だ。
花乃と私は中学からの友達で、高校に入学してからもその関係は変わっていない。

「夢奈、大丈夫」
心配そうな顔で駆け寄ってきた花乃がティッシュを手渡してくれた。

私はそれで手のひらを吹いて、新しく出してくれたティッシュで鼻の周りをふいた。
「まだ止まってないね」

「大丈夫だよ。こうしていればすぐに止まるから」
テッシュを鼻に詰めてちょっと恥ずかしい格好で答える。

だけど花乃は相変わらず心配そうな、泣き出してしまいそうな顔をしている。
「本当に大丈夫だから、そんなに心配しないでよ」

「でも、夢奈がイジメられてるのは私のせいだし……」
か細い声で呟いて下唇を噛みしめる。

そう、2年生に上がってすぐ美羽たちに目をつけられたのは花乃の方だった。