悪事通報アプリ

☆☆☆

翌日は花乃と約束した通り、いつもより20分ほど早く家を出た。
両親には朝の掃除当番になったと、嘘をついた。
いつもより早い時間に出ると街の景色も違って見える。

空気はいつもより澄んでいるし、行き交う人達もサラリーマンや学生にまざって、のんびり散歩している老人や犬の散歩をしている大学生くらいの人の姿が見える。

約束場所に公園に入っていくと、木製のベンチに座っていた花乃がすぐに立ち上がって手を振ってきた。

公園内には花乃しかおらず、誰にも遊んでもらえない遊具が小学生の放課後を心待ちにしているように見えた。

「おまたせ」
「私もいま来たところだから」

私は花乃の隣に座ると、さっそくスカートのポケットからスマホを取り出した。
そして昨日ダウンロードした『悪事通知アプリ』を起動する。

真っ黒な画面に赤い文字で説明が書かれているのがオドロオドロしい。
利用者をわざと怖がらせようとしているようにしか見えなかった。

「まずは今日1日で起こる一番悪い出来事を知る所からだよ」