悪事通報アプリ

花乃はこのアプリの力を信じているみたいだ。
私は軽く肩をすくめて「そうだね」と、同意しておいたのだった。

それから先の花乃はいたって普通だった。
ふたりでデザートを食べた後は大型ショッピングモールへ言って、服や本を見て回った。

ふたりともバイトをしていないからあまり買い物はできなかったけれど、その間に美羽たちに遭遇することもなかったから、楽しい時間を過ごすことができた。

映画を見てから外へでるとすっかり暗くなっていて驚いた。
楽しいと時間が経つのはこんなにも早いものだったか。

「それじゃ、また明日ね」
道の分岐点に指しかかって私は足を止めた。

ここから先へ別々に帰ることになる。
「夢奈、明日少し早めに家を出られない?」

「いいけど、どうして?」

「朝、どこかで待ち合わせをしてアプリを確認しよう。1日が始まる前に、そのアプリを使って最悪な事態を回避しなきゃ」

正直アプリのことなんてすっかり忘れてしまっていたので驚いた。
花乃はしっかりと覚えていたみたいだ。

「うん。わかった」
今の楽しい気持ちを壊したくなくて、私は笑顔で頷いたのだった。