悪事通報アプリ

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先生がやってきて事態は収束したものの、教室内は騒然とした状態が続いていた。

救急搬送されたふたりがどうなったのかまだ知らせは来ていないし、1時間目の授業はA組だけ自習になってしまった。

真面目な川並正則ですらホームルーム前に起きた出来事で興奮していて、授業中にも関わらず隣の席の男子生徒とずっと囁き声で話をしていた。

「すごいことになっちゃったね」
どうせ勉強なんてしないと、私の席に近づいてきていた花乃がつぶやく。

教室後方では青ざめた美羽と蒼が黙り込んで座っていた。
さすがに友人同士の急な争いに驚き、なにもできない様子だ。

「血まみれだったね。あれが晴希の本性だったのかも」
私は同意してそう言った。

普段は腰巾着みたいだ晴希でも、あれだけ強い気持ちを隠し持っていたことになる。

将来議員の座につくために好きでもない美羽とずっと一緒にいたから、不満が蓄積していたのかもしれない。

近くにいた美羽がその澱に気が付かずに晴希をこき使ってきた代償がこれだ。
「でも、夢奈が傷つけられなくてよかった」