血管交換シヨ?

ベッドを背もたれにするように座っていたスズの隣に
ツキくんが移動してきた。

「つぎはぎなんかしても隙間は広がってくのをやめてはくれない」

「つぎはぎ?」

「水族館に行く前からさ、喧嘩っていうか、ちょっとすれ違ってたんだ」

「何があったのか聞いてもいい?」

「ん。最初からちゃんと話すべきだった。あんな最低なことしなくても。順番が逆でごめん」

「もういいから。聞かせて?」

「うん。気づいてるかもしれないけどさ。俺、小説書いてるんだ」

棚にびっしりと並べられた書籍の数々。
木製デスクの上のノートパソコン。
走り書きのメモが何枚も乱雑に置かれている。

なんとなく予感はしていたけれど
あのパソコンの中に小説のデータが入っているのだろう。

小説を書いている、って言葉は
まるでツキくんの皮膚の一部みたいにぴったりと、
ツキくんに似合っている。

「そうなのかなぁって思ってたよ」

「それが美桜にとってはあんまりよくなかったみたいでさ」

「なんで?なんでツキくんが小説を書いてたら美桜ちゃんが困るの?」

「時間と寂しさ、かな?」

「かまってもらえないとか、そういうこと?」

「シンプルに言えばそうかな。現に俺はさ、文学賞とかにも応募したいし小説サイトに掲載したりもしてるんだ。学校以外の時間はほとんど小説書いてるか読んでるか、映画観たりしてインプットしたりしてさ。やってることのほとんどは小説を書く為の勉強みたいな感じで。実際、美桜と会える時間は付き合ってるのに極端に少なかったんだと思う」

「えっと、もう散々言っちゃったから隠さないけどさ?スズもツキくんのこと好きじゃん?」

ツキくんがやわらかく笑って
スズの頭を軽く撫でた。

こんな時にそういうことするから
最悪なんだよ…。