血管交換シヨ?

女子は一瞬、不思議そうに丸い目を瞬かせていたけれど
すぐにプッて吹き出した。

「なにそれ、ちょーダサいじゃん」

「そうなの。ダサいの」

「じゃあぼっちなんだ?」

「うん。そんなとこ」

「じゃあうちらと食べようよ」

「え?」

「おべんとー。ぼっちはさすがにほっとけないし」

優しい子だって思った。

正直、今日まではロクに言葉も交わしたことの無い子だった。
タイプも全然違ったし。

なのにスズのことを気にかけてくれたことがうれしかった。

「いいの?」

「モチ。てかあたしが誘ってんだし」

ありがとうって言ったら、
女子は「大袈裟だな」ってハニかんだ。

自惚れかもしれないけれど、
いや、自惚れだとして
もしもこの子がスズに話しかける為にとんでもない勇気を消費してくれているんだとしたら、

スズはスズのことが好きになれそうだった。
別に特別好きでもない自分のことを
ほんの少しなら好きになれそうな可能性を教えてくれる、
この子は凄い子なんだって思えた。

たとえ今日限りの″遠足お弁当仲間″だとしても。

人、一人が座れそうなくらいのレジャーシートを
パッチワークみたいに継ぎ接ぎ(つぎはぎ)に広げて
お弁当を食べた。

声をかけてくれた女子が、
スズのたこさんウィンナーと交換してくれた卵焼きは
一生忘れないでいられるくらいに、甘かった。