「なーんーでー中原くんもついてくんのよー!」

日曜日。
スズ、ツキくんで美桜ちゃんとの待ち合わせ場所へ向かう。

小学生の頃から駅前にある純喫茶。

場所の指定はスズにさせてもらった。
大切な話だから誰かのおうちとかカラオケとか、
他の誰も居ない場所がいいのかもしれないけれど
スズはわざとある程度、人目のある場所を選んだ。

ゆったりとした時間が流れる喫茶店で
声を荒げることは許されない。
人目を意識することで冷静に言葉を紡げる気もしたから、
この喫茶店を選んだ。

話がしたい、って美桜ちゃんに連絡した時は
心臓がバクバク鳴っていた。

高校受験の日くらい、緊張していたかもしれない。

″突然ごめんなさい。少し時間いいですか″

そう送ったメッセージに、三十分くらいしてから既読マークがついた時は、
まだブロックされていなかったことに安堵した。

当然だけど美桜ちゃんはスズの申し出を拒否した。

″顔も見たくないって言ったはずだけど。しかも新城も一緒にとかなんの嫌がらせ?″

至極真っ当な返信。

それでもあっさりと(きびす)を返すわけにはいかないスズは、
また自分勝手を押し通そうとしていることを理解していながらも頼み込んだ。

(らち)があかないからか、鬱陶しかったからか、
それとも話しくらい聞いてやってもいいと思ってくれたからかは分からない。

それでも折れてくれた美桜ちゃんは
やっぱり優しい人だと思う。